夫婦げんかで相手の言動にイライラしないでいられる方法

長いあいだ夫婦でいると、ケンカをすることはあると思います。

ケンカをしてもすぐに仲直りができればいいのですが、一方的に悪者扱いされて悪いと思っていないのに謝ったり、相手からのひどい言葉に傷ついたり、不満をぶつけられたことをずっと恨みに思ったりすることもあるかと思います。

パートナーとの意見の食い違いや対立、そして心無い言葉の暴力は、大切であるはずの二人の絆をどんどん傷つけていきます。

夫婦げんかで陥りやすい二つのコミュニケーションパターン

例えば、家族で次の日曜日にイベントに出かけようと決めました。あなたはそのために早起きして、お弁当を作り、子供たちの準備を手伝い、準備万端整えました。なかなか起きてこない旦那さんを見に行くと、彼は前日に友達と飲みすぎていて朝から具合が悪い。結局、イベントに行くのはキャンセルする羽目に。。。

こんな場合、どうしますか?

A「楽しみにしていたイベントの前日に飲みすぎるなんて、自分勝手すぎる!」と旦那さんを非難する。

B「私だったら家族を第一にして、その日の前日に飲みすぎるなんてことは絶対しない。大切な家族のイベントの前に飲みすぎるなんて、彼にとっては私や子供たちはそれほど大切じゃないんだな。」と自分の価値に自信を失う。

Aのコミュニケーションは、人を評価し、悪いと決めつけ、非難します。怒りに任せて、相手の気持ちを考えず、傷つける言葉を浴びせかけることもあります。相手に言えない場合、自分の中に不満の言葉をため込みます。

Bのコミュニケーションは、自分を評価し、悪いと決めつけ、非難します。自分自身に対して傷つける言葉を浴びせかけ、さらに自信を失い負のスパイラルに落ちていきます。

残念ながら、AとBどちらのコミュニケーションも人間関係を分断してしまうものです。誰か(自分自身を含めて)を評価し、非難し、傷つけ続けることでは良い人間関係は作れません。

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でも、じゃあどうしたらよいのでしょうか?「家族イベントがあるのに前日に飲みすぎる旦那が悪い!」と思う以外に、この状況にどう対応したらいいというのでしょう?

実は、このAとB二つのコミュニケーションのほかにも私たちには選択肢があります。そして、他の方法を学ぶことで、自分を犠牲にせずに、夫婦のつながりも大切にできるようになることは可能です。

コミュニケーションの5つの椅子

コーチ、企業研修トレーナー、そして”5 Chairs 5 Choices”の筆者であるルイーズ・エバンズは人とコミュニケーションをするときには5つの選択肢があると言っています。彼女の考え方は非暴力コミュニケーション(NVC)の考え方に基づいたものですが、企業研修にも使われる実践的な方法なので参考になると思います。(日本語の翻訳版はこちらからも見られます)

ルイーズはこのTEDトークの中で5つの椅子を紹介しています。

  • 赤:ジャッカルの椅子(自分が正しいと主張し、相手を攻撃する)
  • 黄:はりねずみの椅子(自分が犠牲者だと感じ、自分自身を疑う)
  • 緑:ミーアキャットの椅子(立ち止まって、自分の内と外をただ観察する)
  • 青:イルカの椅子(自分が必要なもの、大切にしているものを見つけ出す)
  • 紫:きりんの椅子(相手が必要なもの、大切にしているものを共感と思いやりの心をもって感じ取り、繋がる努力をする)

私たちが苛立ちを覚えたり、悲しみを抱えているときには、いまどの椅子に座っているのか?と考えてみてほしいと彼女は言っています。

相手の言動にイライラしないようになるには?

夫婦喧嘩をしたときや、自分がイライラしたりモヤモヤした時に、自分の中の声に耳を傾けて,ください。実際に、どんな声が聞こえてくるのかノートや日記に書き出してみてください。その頭の中の声は、どの椅子に座っているあなたからの声でしょう?

ルイーズの5つの椅子は、自分が今どんな状態でコミュニケーションをとっているか?現在位置を確認できるとても強力なツールです。

例えば、上の夫婦げんかの例では、Aのコミュニケーションは赤のジャッカルの椅子に座っている状態であり、Bのコミュニケーションは、黄のはりねずみの椅子に座っている状態ですね。

そして、もし自分が赤や黄の椅子に座っているなと自覚したなら、まずは緑のミーアキャットの椅子に座ってみましょう。ルイーズは緑のミーアキャットの椅子に座った状態をこのように説明しています。

気持ちを静めすみずみに意識を配り、動き回るのをやめ深呼吸し、自分をみつめます…自分が何を考えているのか、どんな言葉を自分に向けているのか、立ち止まり、自分の心に関心を向けるのです。

ルイーズ・エバンズ

そして、緑の椅子に座って自分の心が落ち着いてきたら、次は青のいるかの椅子に座り、自分の心の声に耳を傾けます。私が本当に必要としているのは何なのか?どんなことが大切だと思っているのか?それがなくてどう感じたのか?そういうことを自問自答してみましょう。そうすると自分にとって大切なものが何かがわかりはじめます。

そしてイライラが収まり、大切な相手とまた繋がりたいと思うならば、最後に紫のきりんの椅子に座って、相手が必要なもの、大切にしているものを「共感」と「思いやり」の心をもって感じ取り、繋がる努力をするのです。

非暴力コミュニケーション(NVC)を設立したマーシャル・ローゼンバーグは、自分の気持ちや相手の気持ちを聞き取る耳のことを「キリンの耳」と表しました。それはキリンが動物の中で一番大きな心臓(ハート)を持っているからです。

非暴力コミュニケーション(NVC)について、もっと知りたい方は、ローゼンバーグの著書『NVC-人と人との関係に命を吹き込む法』を読んでみることをお勧めします。

NVCの基本書として、世界中で読まれているベストセラーの邦訳版で、相手を評価したり決めつけたりするのではなく、自分が抱いている感情、自分が必要としていることに耳を傾けることで、怒りや対立を“互いに思いやる機会”(つながる機会)に変え、人生をより豊かなものにするというローゼンバーグの思想にもっと深く触れることが出来ます。

大きなハートで相手の心によりそえるようになるには、まずは、自分の心に寄り添えるようになることが最初のステップです。でも、自分が赤や黄色の椅子に座っていると自覚して、それ以外にも3つも椅子があるということに気づくだけでもあなたの中の何かが変わると思います。

あなたは、どの椅子に座ることが多いですか?

ABOUTこの記事をかいた人

マレーシア在住 心理カウンセラー・ヒプノセラピスト。海外在住歴20年以上の経験から海外在住者ならではのお悩みや、国際結婚をした女性を対象としたカウンセリングを得意とする。子育てや人間関係の悩みから過去のトラウマや恐怖症の克服など様々なお悩みに幅広く対応。カウンセリングと催眠療法・タッピングなどを組み合わせた独自の心理療法で、ポジティブな変化を促すとともに、自分に自信がもてるようになることを目指している。