子どもを性被害から守るために出来ること

子どもを性被害から守るために出来ること

子どもが性暴力の被害者になるということは、決して芸能界でしか起こらない特別な事ではありません。バスや電車内での痴漢行為をはじめ、公園のトイレで子どもに接近してわいせつ行為を行ったり、近年ではネットを通じて加害者に出会うケースも増えています。

性暴力の加害者は子どもに言葉巧みに近づき、子どもの信頼を得たうえで性暴力をおこなうことが多いと言われています。そのため、子どもが性被害にあっている認識が無かったり、周りから見てもわかりにくかったりします。

子どもを性被害から守るには、親が性暴力や性犯罪の手口について理解しておく必要があります。そして何かあったときに子ども自身が危険を察知し、拒否したり逃げたりすることができるように、早いうちから正しい情報を伝える必要があります。

ここでは、親として子どもを性犯罪の被害から守るためにできることを紹介します。音声で聞きたい方はポッドキャストをクリックしてください。文章で読みたい方はこのまま読み進めてください。

子どもに対する性暴力の現状とその手口

性暴力とは、望まない性的な行為のすべてを指します。例えば、のぞきや盗撮、ストーカー行為、痴漢などのわいせつな行為やセクシャルハラスメント、ポルノを見せる、レイプやデートDVなどが含まれます。まずは、子どもに対する性暴力の現状や特徴、その手口について理解しましょう。

被害者の周りにいる信頼している大人が、子どもの性暴力の加害者であることが多い

性暴力の加害者というと、「見知らぬちょっとおかしい人」といったイメージがあるかもしれませんが、実際は信頼を置いている近い大人が性犯罪の加害者になることが多いという事実は、日本ではあまり知られていません。

例えば、父親や義理の父親、兄弟、祖父、おじさんといった近親の男性、近所の人やベビーシッター、先生、親の友人・知人、自分の友達や知り合いといった、被害者が直接知っている人が加害者であったりします。

また、大人の男性が加害者で女の子が被害者であるイメージがあるかもしれませんが、実際は女性が加害者になることもありますし、男の子だから性被害にあわないということもありません。

子どもは性被害にあっているという認識すらもっていないことが多い

幼い子供でも性暴力の被害者になりえますが、幼い子供は特に性暴力を受けたことすら認識できないことが多いです。それは、ひとつには幼い子供は自分の体に触られてはいけない場所があることを知らないことに原因があります。日ごろからどこまでが普通でどこからがNGなのかといった会話をして、幼い子供でも理解しておくことが性被害の防止に繋がります。

自分の幼い子どもたちが性被害に遭わないようにするために、日ごろから性犯罪について、そして身を守る方法を教えましょう

加害者は子どもに対してさまざまな方法によって接近し、信頼関係を築こうと試みる(グルーミング)

大人が性的な目的で子どもに近づき親しくなることを、グルーミングと言います。

このグルーミングのプロセスは、数日から数週間、または数か月にわたって行われます。多くの場合、子供にプレゼントをしたり、褒めたり悩みを聞いて慰めたり、注意や愛情を与えたりして、子どもが特別で大切にされていると感じさせ、信頼を得ます。

グルーミングで子どもの心をつかむと、子どもが加害者の事をかばって性暴力を受けたことが表面化しにくくなります。また性暴力が行われても子ども本人が「好きだったからだ」「愛情表現の一つ」などとその行為を肯定して受け入れてしまうこともあります。そのため、被害が長期化したり発見できなくなる可能性があります。

性被害は外から見てわかりにくい

加害者は子どもにとって身近で信頼している大人である場合も多く、子どもが加害者をかばってなかなか表面化しにくくなります。

また、被害にあった子どもは、自分の身に起こったことを恥ずかしいと思ったり、自分が汚れてしまったと感じ、性暴力が起こった事を受け入れられずに「なかったことにしよう」とすることもあります。「相手を信用した自分が悪い」「あんなところについていかなければよかった」と自分を責め、親にも言い出せないこともあります。

加害者が子どもに対して優越的な関係にあれば「これをしないと〇〇ができなくなるよ」などと圧力をかけたり、不利なことが起こると脅したりします。「これは二人だけの秘密だよ」「お父さんやお母さんに言ったら、きっと家を追い出されてしまうよ」「友達に知られたら嫌われるよ」「(何かしらのサポートが)得られなくなるよ」などと脅され、子どもは話したくても話せなくなります。

被害者である子どもが勇気を出して周囲の大人に話したとしても、話された側が受け入れられなかったり子どもを疑ったりと、その後の周囲の反応に傷つき「あれは嘘だった」と証言を翻すこともあります。被害を受けた子どもの気持ちは不安定で、被害の証言もそのときどきで変わり、大人が信用してくれなくなるケースもあります。

このように、子どもが性被害を受けたことを伝えるハードルはとても高く、性暴力が表面に現れずに闇に葬られてしまうこともしばしばです。

実際のグルーミングと性暴力のパターン

例えば、加害者は直接またはオンラインで子どもと知り合い、仲良くなります。時には理解ある大人のふりをして、親に話せないような悩みの相談にのったり、プレゼントやお金、その他子どもが望むものを与えて、子どもが特別な存在であるかのようにふるまい、徐々に信頼を得ていきます。

実際に会っては、不適切に体に触れたり性的なコメントをしたりして、子供がどこまで大丈夫かその境界線をテストし始めます。子供との信頼が深まるにつれて、加害者は子どもを友人や家族からひきはなしたり、脅しを使って関係を報告しないようにしたりします。

性暴力が行われても、子どもは何が自分の身に起こっているのか混乱し、これは性暴力ではないと否定したり、自分が悪いのだと罪悪感を抱いて親に報告できなかったりします。時には、加害者は子どもより優越的な立場から、脅しを使って関係を長期化させる場合もあります。

子どもの自己肯定感を高める声かけ集

子どもを性被害から守るために親ができること

では、親として子どもにどんなことを教えたらいいのでしょうか?ここでは5つのポイントを説明します。

ポイント1.自分の身体には触らせてはいけないプライベートゾーンがあることを教える

自分の体は自分のものであり、どんなに親しい間柄でも触っていけないしてはいけない体の場所があるということを子供たちに教えることが重要です。

プライベートゾーンとは、口と水着で隠れる体の部分です。言葉がわかる2~3歳ぐらいから「口と水着で隠れるところは自分だけの大切な場所だから、見せてはいけないし誰も触ってはいけないんだよ」ということを教えましょう。

プライベートゾーンとは、口と水着で隠れる体の部分です。言葉がわかる2~3歳ぐらいから「口と水着で隠れるところは自分だけの大切な場所だから、見せてはいけないし誰も触ってはいけないんだよ」ということを教えましょう。

同時に、お友達であってもこういうところは触ってはダメだよと伝えます。お風呂の中で、「ここはあなただけのとっても大切なところだから、他の人は見たり触ったりしてはいけないんだよ」といった感じで伝えるといいと思います。

ポイント2.プライベートゾーンを触ってくる人がいたら、「NO」と言っていいということを教える

もし何かおかしいなと思ったら、「助けて!」と叫び、安全なところやもっとたくさんの大人がいるところに走って逃げることを教えましょう。知っている人でもそうでなくても「見せて」とか「触っていい?」と言ってきたら、「いやだ」「ダメ」とはっきりと断っていいことを、なるべく幼いうちから伝えてください。

ポイント3.性被害にあっても、子どもは悪くないことを伝えておく

日ごろから、子どもとオープンに話せる環境を作り、子どもが何でも話し合えるような親子関係を築いておくことも大切です。そして、だれかが不快な方法で近づいたり触れたりしてきた場合、子どもが悪いのではなく悪いのは相手なので、怒られたり責められたりする心配はない事を伝え、何かトラブルにあったときは必ず相談するよう繰り返し伝えましょう。

ポイント4.子どものオンラインやソーシャルメディアの使用状況を定期的にチェックする

子どもがスマートフォンやIpadにアクセスできる機会が増え、オンラインで知らない人とも簡単につながる機会も増えました。それに伴い、子どもがオンラインを通じて知り合った知らない人に言葉巧みにだまされたり脅されたりして、自分の下着姿や裸の写真を相手に送信したり、性的な画像が送られてくるといった性被害が増えています。

子どもにはネットでつながる楽しさを認めてあげながらも、悪質な目的で使う人もいることを伝え、インターネットで知り合った人を簡単に信用しない事、個人情報を知らない人に教えない、そして下着姿や裸の写真は撮らない送らない、親の許可なしにオンラインで知った人に会いに行かないといったことを、子どもにしっかり伝えるようにしましょう。

そして、子どもがオンラインで何をしているのか、どんなソーシャルメディアを使い誰と通信しているか、どのような情報を共有しているかといった使用状況について定期的に把握し、必要に応じてペアレンタルコントロールの機能やアプリを使ったり、フィルタリングを利用したり、家庭でのルールを話し合う機会を持ちましょう。(参照:政府広報オンライン ネットの危険からこどもを守るために保護者が知っておきたいこと

ポイント5.子どもにとって危険な状況には近づけない

海外では、子どもの安全を確保し犯罪に巻き込まれないように、公園で一人で遊ばせない。ショッピングモールなどの公共の場で一人にしない。トイレに一人で行かせない。暗い夜道を一人で歩かせない。公共の交通機関を一人で使わせないといったことは当たり前です。これに比べて、日本では子どもが一人で公園やトイレに行ったり、公共の交通機関を使ったり、夜道を一人で歩いたりさせても安全だといった認識があります。

しかし子どもの安全の確保のためには、親が十分気を使う必要があります。例えば、公園やショッピングモールなどの公共のトイレは、性暴力の加害者が好んで子どもを待ち伏せする場所なので、幼い子は特に一人で行かせたりしないなどの配慮が必要です。(参照:NHK 日本は世界一危険? ショッピングモールや公園のトイレでの子どもの性被害

また、子どもには知っている人や信頼する人であっても、親の知らないところで車に乗ったり、個室に二人きりになったりしないように伝えましょう。

子どもの自己肯定感がUPするまほうの50フレーズ

文部科学省「生命(いのち)の安全教育」について

2023年より、全国の学校で「生命(いのち)の安全教育」が始まります。プライベートゾーンや性被害を防ぐための知識を幼稚園・保育園から発達段階に応じて集団で学ぶことになっており、小学校などでは担任の先生が道徳の時間で教えるようになるということです。

「生命(いのち)の安全教育」には、幼児、小学生、中学生、高校生と発達段階ごとにわかりやすく説明した動画教材がありますので、子どもと一緒に見て感想を述べあったり、親自身の知識としてみておくだけでも参考になるかと思います。

このほかにも幼児用、小学生用、中学生用、高校生用など発達段階に応じた様々な動画教材がありますので参考にしてください。「生命(いのち)の安全教育動画教材」プレイリスト

まとめ

子どもが性被害に遭わないようにするためには、親が子どもに身を守る方法を教える必要があります。性暴力はなかなか表面化しにくい犯罪であり、被害者は泣き寝入りするしかなかったり、長年にわたり罪悪感やトラウマに苦しむ被害者も大勢います。

性犯罪のパターンを知り子どもが小さいうちから教育する。子どもとオープンに話し合えるような、良好な親子関係を築いておく。なるべく性犯罪に巻き込まれないような対策をとるといったことが必要です。

子どもを性暴力の加害者から守ることは、子どもが成人するまで続くプロセスです。上記の手順を継続的に実行することで、子どもの安全を守ることができます。

最後に、子どもが性犯罪の被害者であることに気が付いたら、必要に応じて行政や警察のサポートを得て対応しましょう。同時に、子どもの心の傷を癒すために、カウンセリング、セラピー、サポート グループといった専門家の助けを求めてください。

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マレーシア在住 心理カウンセラー・アロマクラフト講師。海外在住歴20年以上の経験から海外在住者ならではのお悩みや、国際結婚をした女性を対象としたカウンセリングを得意とする。子育てや夫婦関係の悩み、親子関係のトラウマなどを感情から開放するセラピーをオンラインにて提供中。