「人にイライラしてすぐにカッとなってしまう」「普段から怒りっぽい自分を変えたいけど、なかなか怒りを抑えることができない」そんなお悩みを抱える方は多いと思います。
怒りを感じたあと嫌な気分になったり、精神的・肉体的にどっと疲れてしまうこともあるでしょう。怒りたくないのに、ついイラっとして人に強く当たってあとで罪悪感を抱いたり、ちょっとしたことで怒ってしまう自分に嫌悪感を抱いている方もいるかもしれません。
しかし、イライラを無理に抑えたり、我慢したりするのはかえって逆効果。なぜかというと、それは一時的な対処法でしかなく、怒りを我慢したり自分で感情を抑えようと繰り返していくうちに、自分の欲求や気持ちがだんだんとわからなくなり、無感動になったりうつっぽくなってしまうこともあるからです。
怒りやイライラを根本的に解消するには、その怒りの根本にある思考や感情、そして過去の経験といった根本的な理由を明らかにする必要があります。
今回はイライラを改善し、怒りを鎮められるようになるための根本的な3つの解消方法についてご紹介します。音声で聞きたい方は、ポッドキャストの再生ボタンをクリックしてください。文章で読みたい方は、そのままお読みください。
怒りは二次感情
怒りの感情は、何か他のネガティブな感情を隠すために現れる二次感情です。ですから、怒りやイライラを解消するには、まずは怒りの根本にある一次感情は何かを明らかにすることが必要です。
例えば、私の経験ですが、息子が6歳ぐらいの時に空港で迷子になったときがありました。トイレに入って出てきた時にはすでにいなくなっていたのです。家族みんなで彼を探し、構内のアナウンスをしてもらいあちこち走り回ること約15分、係の人が息子を見つけて連れてきてくれました。彼を見た時の私の最初のリアクションは「なんで一人で勝手に遠くまで歩いて行ったの!?」という怒りでした。
でもその下にあった一次感情は何だったのかというと、見つからなかったらどうしようという焦りや不安、そしてはぐれた息子がどこかで一人で泣いているかもしれないといった心配。どうしてしっかりはぐれないように見ていなかったのかという罪悪感や恥ずかしさでした。
「焦り」「不安」「悲しみ」「虚しさ」「恥ずかしさ」「心配」「さみしさ」といった感情は、自分の弱さを露わにしてしまう感情です。大抵の人には「弱い自分を見せるのは恥ずかしいし、人から受け入れられない。自分を良く見せたい。強く見せたい。」という欲求があります。ですから、無意識的にこのようなネガティブな感情を感じるのを避け、本人すら元の感情に気がつかないうちに「怒り」にすり替えてしまうのです。
「怒り」は怒っている人を正当化し、「怒らせた側」を悪者にしてしまいます。そうすると、いつまでたっても自分が怒っている本当の理由がわからず、根本的な解決ができません。これが、一人でアンガーマネジメントをするのが難しい理由の一つです。
カウンセリングでは、この深層にある感情や思考、過去の経験などを明らかにすることで、怒りの解消を手伝うことができます。このコラムでは、私が「怒り」で困っているクライアントさんに対して、セッションでどういうところに焦点を当ててどう対処しているのか、一人でできる方法などを中心に説明します。
怒りの3つの解消法
怒りの解消方法① 一次感情を見つける
良く子供に怒ってしまうという方は、怒りが収まったあとでも良いので「なぜあの時、怒ったんだろう?」と考えてみましょう。本当は何を恐れているのか?何を避けているのか?何に傷ついているのか?何が不安なのか?といったことがわかると、怒りの本当の理由が見えてきます。一次感情が何かわかれば、根本的な対策をとることも可能です。
例えば、先日子どもが学校に持っていかないといけない物があったのですが、それを家を出る直前に「持っていかないといけないから、準備して!!」と言われて、イラっとしてつい「あなたが昨日のうちに言わないから、こんなことになるんでしょ?これはママの仕事じゃないからね!!」と怖い顔して怒ってしまいました。次男は「ごめんなさい」としゅんとしていましたが、もう時間がなかったので、朝はそのまま話も出来ずに学校に送り出しました。
子供たちを学校に送り出した後に、なんであの時怒ったんだろう?と考えました。そうするとこんな理由がでてきました。
- 時間がないという焦り。ギリギリの時間で、これ以上遅くなると、学校に間に合わなくなってしまうという心配がありました。
- 学校への不満。いつも学校の実験やイベントの時には、親が全部用意しないといけないのに、学校からの連絡はいつも前日とか。親に用意してほしいなら、何がどのくらい必要なのかぐらい、あらかじめ教えておくのが常識じゃないの!!という不満をずっと抱えていました。
- 次男に対しての嫉妬。どうしてこのくらい自分で前日のうちに準備できないの?私が子どものときは、いつも怒られてた!!という嫉妬心もありました。
- 寝不足による疲れ。夜中に目がさめてしまって、それから寝付けず、睡眠時感が足りなかった。
- 歯が痛い。数日前からから歯が痛くて、歯医者に行こうかどうしようか迷っていた。
と、ここまで書き出してみると、実は全部自分都合で怒っていて、次男が悪いわけではなかったという事に気が付きました。これは、朝イライラしている時には全く気が付いていませんでした。
一次感情がわかれば、それに対してひとつづつ対策を練ることができます。
例えば、学校に行くのがギリギリなのであれば、子どもを10分早く起こす。学校に必要なものは、前日に準備するように声をかける。自分の寝不足の解消には、就寝時間を30分早める。歯の痛みは痛み止めを飲んで、歯医者さんに予約をして治療に行くといった感じです。
それに、今朝のイライラの原因が次男が理由なのではなかったという事がわかったので、彼に後で延々とお説教したり、あとあとまでおこり続けるということも、罰を与えなきゃみたいに思うこともありません。朝に怒ってしまった事をあとで謝って、子どもに対してもフェアでいられました。
怒りの解消方法② 自分の常識や「べき思考」を見直す
自分に対する期待値が高く完璧主義で、これまで様々なことを頑張ったりいろんなことを成し遂げてきた方は、周りに対する期待値も高く「べき思考」が強い傾向にあります。
もし、「~すべき」「~が常識」「~するのが当たり前」と考えることが多い人は、この考え方が「怒り」の原因であるかもしれません。というのも、自分の思考や信念が自分がどう感じるのかという事に大きく影響を与えるからです。
例えば、「宿題は出たその日の夕ご飯前に終えるのが当たり前」という信念をもっていたら、夕ご飯の時間になっても宿題をする様子がない子供に対してイライラしてしまうでしょう。でも、「宿題は、提出日までに間に合えばいい」と思っていたら、夕飯を作っている間にイライラすることもなくなります。
イライラの原因は、宿題をすぐにしない子供にあるのではなく、自分の思考にあるわけです。そして、学校から帰ってちょっとゆっくりしたいと思っている子どもに無理やり宿題をさせるより、自分の考え方をちょっと変える方が実は簡単で確実です。
といっても、これまで信じていたことを突然変えるのはなかなか難しいかもしれません。「自分は正しい」と主張したくなる気持ちもわかります。しかし、人生の優先順位を「自分の正しさ」に置くのか、それ以外に大切なことがないのか?一度考えてみることが大切です。
その思考や信念は自分の人生において何か役に立っていますか?怒り続けることにエネルギーを使うことで、失っているものには何がありますか?自分の人生において本当に大切にしたいことは何でしょうか?
普段からいつも怒っている人は、その怒りの元となっている自分の思考や信念をまずは疑ってみましょう。期待値を下げ、「~すべき」「~が常識」「~するのが当たり前」を「~するのが好ましい」と言い換えてみましょう。当たり前であることや、家族が健康で幸せであることに感謝しましょう。そして、大きな視点から物事を見ることで、実はたくさんの解決方法を見出すことが出来ます。
怒りの解消方法③ 過去の怒りを解放する
今の怒りは、過去の怒りの感情と数珠つなぎに繋がっています。ですから、ちょっとしたことで急に瞬間湯沸かし器のように怒ってしまうという人は、おそらくは過去の怒りが積もり積もって、怒りの感情が増幅されている可能性があります。
例えば、夫婦喧嘩をしているときに、過去にされた嫌な出来事まで持ち出すことがありませんか?これが怒りが数珠繋ぎに繋がって思い出されている状態です。今起こったこと以外の、昔のことまで引き合いに出してこられて、どんどん怒りがエスカレートしていくと、仲直りしようにもできなくなってしまいます。これでは夫婦関係は良くなりません。
過去の怒りというのは、身体のどこかに停滞している不必要なエネルギーなので、エネルギーの動かし方を知っていれば、誰だって自分で解放することができます。解放の仕方もいくつかあるので、私のセッションでクライアントさんといっしょにしたり、クライアントさん自身が自分で使えるようにやり方を教えたりもしています。
もし自分で過去の怒りの解放したいと思われるなら、ジャーナリングをお勧めします。その出来事を思い出してその時の気持ちや感情をとにかく吐き出していく必要があります。
過去の怒りのエネルギーを解放すると、怒りは目の前にあることに対して適切な大きさになるので、余計なエネルギーを使わなくて良くなります。過去の怒りのエネルギーがなくなると、本当に体も心も楽になり、性格もおおらかになってきます。人間関係が良くなるので、自分らしく生きられるようになっていきます。
過去の怒りのエネルギーを解放したら、もう怒る必要がなくなるから、行動が変わって現実も変わり始めます。私のクライアントさんの中には、子どものころの父親に対する怒りを解放して、自分と子どもとの関係が良くなった人や、夫婦関係が円満になった方もいます。子どもから「おかあさん変わったね。どうしたの?」といわれるくらい変化したクライアントさんもいます。
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怒りやイライラを解消する方法のまとめ
今回は、カウンセリングで実際に使う「怒り」の解消方法を3つお伝えしました。このどれもが、認知行動療法や臨床心理学の論理に基づいたものです。
- 一次感情を見つけてる
- 自分の常識や「べき思考」を見直す
- 過去の怒りを解放する
自分の思考や感情、行動を客観的にとらえることをメタ認知といいます。メタ認知能力が高い人は、自分自身を客観的に見ることができるので、感情や行動をコントロールすることができて、冷静な判断や行動ができる能力が高いと言われています。ここにご紹介した3つの解消法はすべて、自分のメタ認知度を上げる効果がありますので、ぜひ試してみてくださいね。
怒りの解消方法は、ここに説明した以外にもまだいろいろあります。いつもイライラして怒ってばかりという方は、カウンセリングで過去の怒りを解放したほうが早くて効果的な場合も多いです。
一人でどうしたらよいのかわからないときは、ぜひ一度相談しに来てくださいね。あなたの怒りがどこから来ているのか、怒りの下にある一次感情は何なのか、その怒りを解消する一番最適な方法は何か?そして「怒り」が無くなったとき、どんな世界が待っているのか、そんなことをお話しできると思います。