生まれたときからスマホが身近にある子どもたちは、デジタルネイティブ世代。ほんの小さな子どもでも親の手助けなしに、上手に指先を使って好きな動画を見たりアプリで遊ぶことができます。今やデジタルテクノロジーに「触れさせない。買い与えない」という選択肢はほとんどありません。
しかしながら、子どもがスクリーンにくぎ付けになっている姿を見て不安を感じたり、スマホ依存・ネット依存ではないかとイライラモヤモヤしてしまう方も多いかと思います。特に子どもがゲームやスマホの利用に関する約束を守らないことについて、悩んでいる方も多いかもしれません。
海外では、子どもがスマホやタブレット、コンピューターやゲーム機器などのデジタルテクノロジーに触れている時間の事を、スクリーンタイムと呼びます。「子どもがスクリーンを眺めている時間」という意味です。
今回は、スマホやゲーム時間を守らない子供への対策方法についてお話しします。
どうして子どもは決められたルールを守れないのか?
大抵の家庭では、子どもに専用の機器を買い与える時に、使用に関する何らかのルールや約束事を決めたのではないかと思います。しかしどうしてそれが守れないのか、子供がスクリーンタイムのルールを守れない理由には、一般的にこのようなことが考えられます。
子供がスクリーンタイムのルールを守れない理由
1.ルールが親の押し付けになっている。
親が一方的に約束やルール、ペナルティ・罰則を作りガチガチに管理している場合、子どもは納得していないので、ルールが守られないこともあります。
2.子どもの認識不足
子供はまだ成長の途中です。特に小さいお子さんであれば、約束事を守ることやルールの重要性、その背後にある親の意図などを理解していないことがあります。スクリーンタイムの影響や制限の必要性についても理解が不十分なため、ルールを守ることに関心を持っていないかもしれません。
3.デジタルテクノロジーの誘惑
スマホやタブレットなどのデジタル機器は、子供にとって楽しくてとても魅力的です。子どもは自分の衝動を制御する能力がまだ発展途上にあるため、楽しさのあまりついつい誘惑に負けてスクリーンタイムの制限を破り、長時間使用してしまうことがあります。
4.ピアプレッシャー
現代ではオンラインで友達と遊んだりコミュニケーションをとることで、仲間と繋がり友情をはぐくむようになってきました。ですから、友達と楽しく遊んでいるうちにスクリーンタイムのルールを破ってしまうこともあるかもしれません。
5.欲求不満とストレス発散
現代においてゲームをしたり動画を見たり、友達とコミュニケーションをとることは、欲求不満やストレスを解消する手段となっていますので、ついついスクリーンタイムのルールを超えてしまうこともあるかもしれません。
6.親の行動を観察
子供は親の行動をよく見ています。もし親が長時間使用している場合、子供も同様の行動をとるかもしれません。
このように、成長段階にある子どもがスクリーンタイムの約束を守れない理由は様々です。これからの子育てにおいて、デジタルテクノロジーとのつきあい方を教えることは子育てで不可欠な事ですので、子供がルールを守らない場合、親は対話を通じて子供の動機やニーズを理解し、適切な対応をすることが重要です。
子どもがルールを守らない時にしてはいけない親のNG行動
子どもがルールを守らない時に、親としてはその行動をすぐに変えさせたいと叱ったりお説教をしたりしたくなるかもしれません。時には「スマホ/ゲーム機などをを取り上げて一定期間使わせない」といった最終手段に出ることもあるかもしれません。しかし叱ったり罰を与えるといった行動は、親子の対話のきっかけを無くし、子どもとの信頼関係を壊す可能性があるので、お勧めしません。
具体的には、子どもがルールを守らない時にしてはいけないNG行動にはこのようなものがあります。
- 「約束したでしょ?」「ルールは守るべき」などと正論で責める。
- 「約束を破る子はママ嫌いだよ」「ルールが守れないと、ダメな大人になるよ」などと脅す。
- イライラして叱る。怒る。怒鳴る。喧嘩をする。
前項でお伝えしたように、スクリーンタイムを守れないのには様々な理由があります。それを無視してただ正論で責めたり、脅したり、叱ったり、怒ったりしては、子どもの自尊心を傷つけ親への反発心をあおるだけで、何の解決にもなりませんし、こっそり見ているのに「見ていない」と嘘をつくようにもなりかねません。
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子どもがルールを守れるようになるファミリーテクミーティング
デジタルテクノロジーとの付き合い方に、正解はありません。子どもが安全で楽しいスクリーンタイムを経験できるためにはどんな「家庭内のルール」が必要か、親子でオープンに話し合う機会がファミリーテクミーティングです。
ファミリーテクミーティングの6つのステップ
1.ミーティングの開催日時と場所を設定する
まずは、「スマホやゲームの使い方について、みんなで集まって一緒に話し合おう」と持ち掛けます。この時に、子どもが「怒られるのかな?」「何かお説教されるのかな?」と感じると、なかなか前向きに参加してもらえなかったりしますので、威圧的な態度や強制的なニュアンスではなく、「あなたの意見を聞かせてほしい」とあくまでもニュートラルに誘いましょう。
2.まずは子どもの意見を先にじっくり聞く
親が文句や意見ばかり言っていると、子どもは何も言えなくなってしまいます。まずは子どもにポジティブなことを話してもらうことから始めましょう。例えば、デジタルテクノロジー(スマホ、タブレット、コンピューター、ゲーム機など)を使えて、どんなことが良かった?今、どんなことをしているのが楽しい?など。子どもが一通り話し終えたら、親もどんなことで楽しんでいるのかを話しましょう。
ポジティブな事を話した後で、ネガティブな事を聞きます。デジタルテクノロジーを使うことに関して、どんなことが気になっているのか?困っている事や不満、問題点を話し合います。まずは子どもの話に耳を傾け、受け止め共感の気持ちを示します。この時に、決して「だけど…」とか「それは前に決めたよね?」などと子どもの意見を遮ることはNGです。じっくり今の気持ちを話してもらうことで、受け止めてもらえているという安心感や信頼を構築します。そのあとで、親の困っている事や不満、問題点についても話します。
3.解決策を話し合う
親が問題だと思っていることや、子どものルール違反について話すときは、子どもを責めたり脅したりするのではなく、なるべくニュートラルな口調で、なぜ守れなかったのか、彼らの気持ちやニーズを聞きましょう。「これは問題だと思うんだけど、どうしたらいいと思う?」「こういうことで困っているんだけど、あなたはどう思う?」という感じで、子どもの意見を尊重しつつ解決策を話し合いましょう。
最も重要なことは、子供とのコミュニケーションを通じてお互いの理解を深め、協力し合うことです。対話を通じて子供にスクリーンタイムの適切な使い方を教えることも大切です。お互いの気持ちを尊重し問題解決に取り組むことで、子供がルールを守る意欲を高めることができます。
4.ルールはシンプルかつ柔軟に
ルールは子供がシンプルで理解しやすいものである方が守られやすいです。これまでのルールに関しても、家族で協力して見直すことも検討しましょう。また、自分の意見が反映されたルールには子どもも従いやすくなりますので、できるだけ親の一方的なルールではなく、子どもの意見も取り入れて納得のいくものにしましょう。そして、ルールは一度決めたら絶対に守らなくてはいけないものではなく、子供の成長や状況、必要性に合わせて柔軟に変更することも大切です。
5.ルールを守れなかったときの結果やペナルティーについて
子供には自分の行動に責任が伴うことを教え、ルールを守らない場合どのような結果になるか、具体的なペナルティーや罰則を説明し、彼らが自身の行動について考えるきっかけを与えます。ペナルティーを作る際には、子どもがそれに同意することが重要です。ただし、ペナルティーは子どもに悪い事をしたことを思い知らせて痛めつけるものではなく、より適切な行動を学ばせるための手段であることを忘れずに行ってください。
6.まず親がお手本を
子供は親の行動をよく見ています。ですから、親であってもスクリーンタイムのルールを守ることは大切です。まず親が良いお手本となりましょう。
このミーティングの目的は、家族みんなが幸せに楽しくデジタルテクノロジーと付き合うにはどうしたら良いのかを、みんなで考え話し合い、お互いの合意を得ることです。決して親の意図を押し付ける場ではないことを理解したうえで、公平でクリエイティブな解決方法を探りましょう。
このファミリーテクミーティングを定期的に行うことで、各々の理解と共通認識が深まり、家庭でのルールが守られやすくなります。子どもの成長に合わせて新たなニーズや問題もあらわれてくるので、ファミリーテクミーティングは定期的に行うことをお勧めします。
ファミリーテクミーティングをどう始めたらいい?
ファミリーテクミーティングをどう始めたらいいのかお悩みの方向けのレッスンをお届けします。「ファミリーテクミーティングはじめの一歩」ワークショップで、子どものスマホやゲームの使用の悩みを解消しませんか?
- 子どもがスクリーンをみているとイライラモヤモヤする。
- 何度言っても、ルールを守ってくれない。
- 制限やロックを子どもが勝手に外して隠れて使っている。
- すでに制限がない状態になっていて、子どものやりたい放題。コントロールできない。
- デジタル機器を取り上げると、泣き叫んだり癇癪を起こすので困っている。
- 家族でうまく話し合えるか自信がない。
これからの生活において、インターネットやデジタルテクノロジーは切っても切り離せないからこそ、親がプロアクティブに子どもとかかわっていくのが理想です。このワークショップでは、子どもにどのようにアプローチしたらいいのかをお伝えしています。ワークショップはオンラインでいつでも好きな時間に観ることができます。オンラインデバイスやスマホ使用に関するご家庭のルール作りにお役立てください。
まとめ
今回は、スマホやゲーム時間をを子どもが守れない時に効果のある、ファミリーテクミーティングについてご紹介しました。
デジタルテクノロジーを使うという事は、「道路を歩く」ことと同じ。危ないからと歩かせなければ、いつまでたっても一人で道路を歩けるようにはなりません。安全に歩くには何に気を付けたらいいのか?どんな交通ルールがあるのかを、教え込んで最初は見守りつつ導きサポートしてあげることで、子どもは最終的に一人歩きができるようになっていきます。デジタルテクノロジーについても同じで、「制限する」「管理する」「使わせない」といった方法ではなく、「どうしたら安全に、健康的に利用できるか」を辛抱強く教える姿勢が大切です。
子どもの心身の健康を守り、子どもがネットを安全に利用できるようにサポートするために、このファミリーテクミーティングを家族のコミュニケーションの場として活用してくださいね。