今の子供達にとっては生まれたときからインターネットに触れています。しかし、子どもがスマホやタブレット、ゲーム機やコンピューターをずっと使い続けている様子を見て、ネット依存症やゲーム依存に陥るのではないか?心身や脳に悪影響ではないかと不安を感じる方も多いかもしれません。
インターネットの動画やゲームなどは、本来子どもが夢中になるように作られているので、放っておいたら何時間でも見ていることがあります。しかしそのために宿題を後回しにしたり、部屋に閉じこもったり、寝る時間が遅くなったりしている子どもを見ては、イライラしたり、モヤモヤしたりすることもあるでしょう。何度言ってもいう事を聞かない場合は、 「もう取り上げるよ!」と言ってしまいたくなることもあるかもしれません。
しかし、スマホやゲームを取り上げるのは、実は逆効果です。
インターネット環境が当たり前の時代、子供がインターネットと健康的な付き合い方ができるように、親子で決めたルールの中で、子どもが自ら選び自分の意思でやめられるよう、繰り返し教育していくことが大切です。
今回は、「取り上げる」という罰則ではなくそれ以外の方法で、子どもがインターネットと上手に付き合えるようになる方法についてお話しします。
どうしてスマホ・ゲームを取り上げるのは逆効果なのか?
子どものスマートフォンを取り上げることが逆効果な理由はいくつかあります。
まず、 子どもが自分のスマホを取り上げられると、反発心が生じることがあります。また、親から見つからないように隠れてスマホを使おうとする行動も増えるかもしれません。反発心は親子の信頼関係を損なう原因となり、親の伝えたい事や教えたいことが伝わらなくなる可能性があります。
また、スマホは子どもたちのコミュニケーション手段の一つです。取り上げることで、友達と連絡が取れなくなり、不当に感じたり孤立感を感じるかもしれません。
最後に、親がスマホを管理できるのは今の内だけです。大人になったときにうまく自分で管理し、適切な時間に使うことを学ぶには、ただ取り上げるだけでは意味がありません。最終的には、子ども自身がインターネットと上手に付き合う方法を学ぶことが重要です。
子どもと一緒に考える、インターネットとの上手な付き合い方
では、どうしたら子どもがインターネットと上手に付き合るようになるでしょうか?ヘルシーなデジタル習慣を身に着けるには、このような方法があります。
1.適切なコンテンツの選択
子どもには質の高いコンテンツ(動画やゲーム、アプリなど)を選ぶように促すことが重要です。児童精神科医のDr. Shimi Kangは、著書「The Tech Solution: Creating Healthy Habits for Kids Growing Up in a Digital World」にて、食べ物にはヘルシーな食べ物とジャンクフードがあるように、テクノロジーにも「ヘルシーなテクノロジー」と「ジャンクテクノロジー」があると述べています。ヘルシーなテクノロジーとジャンクテクノロジーの違いは、これらの活動中に脳内で放出される脳内ホルモン(神経伝達物質)に関連しています。
Dr. Kangによれば、「ヘルシーなテクノロジー」とは、セロトニンやエンドルフィン、オキシトシンといった脳内ホルモンの放出を促進するデジタル活動のことを指します。セロトニンは体を動かしたり遊んだり、物を作ったりするときに放出されるホルモンで、子どもの好奇心や学ぶ力、クリエイティビティーを刺激します。エンドルフィンは、瞑想やマインドフルネス、音楽を聴いたりして、心を穏やかにしているときに放出されるホルモンで、子どもをリラックスさせ、心身の健康を促進します。オキシトシンは、人とのつながりを感じる時に放出されるホルモンで、安心感と親子のつながりを強めます。
ヘルシーなテクノロジーとしては、子どもが積極的に参加できる知的なゲームやアプリ、教育番組や知的好奇心を刺激する動画、身体を動かす必要のあるゲーム、お絵かきや動画の編集作成など、自分で何かを作り出す必要があるコンテンツ作成ツールなどがあります。学びのあるものや子どものクリエイティビティーを刺激するものなどを優先的に選びましょう。
一方、「ジャンクテクノロジー」とは、無意識で繰り返される、しばしば中毒性のあるデジタル活動を指します。これらの活動は、脳内で快楽ホルモンといわれるドーパミンの過剰な放出を引き起こします。ドーパミンが分泌されると、達成感や多幸感が得られるので、それが中毒性を引き起こす原因になることもあります。
ジャンクテクノロジーの例としては、ロールプレイゲームや戦闘系のゲーム、エンドレスに次のおすすめ動画が出てくる教育性の低いYoutube動画やソーシャルメディアなどが挙げられます。これらは無意識に中毒性を持つため、過度のスマホ・ゲーム時間を誘発したり、注意力の低下、不安、社会的孤立などのネガティブな影響を引き起こす可能性があります。
Dr. Kangは、子どもにヘルシーなテクノロジーの習慣を促進する一方で、このようなジャンクテクノロジーには気をつけるよう伝えることが大切だと説いています。
2.親子の対話を通して教育とルール設定(ファミリーテクミーティング)
子どもとの対話を通して、スマートフォンやゲームの使い方にたいするルールを決めることが大切です。例えば、1日のスクリーンタイムの上限を設けたり、学業や運動などの活動に優先させる時間を設けることで、バランスの取れた生活をサポートします。ルールを家族で共有し、子供とのコミュニケーションを大切にしましょう。
このルールは一度決めたら終わりではなく、ファミリーテクミーティングで定期的に家族で話し合う機会を持ち、お互いのニーズや心配について理解し合うことで、子どもも大人も満足できるルールを作りやすくなります。また、子供が困っていたり、誘惑に負けそうになったときに親がサポートできるよう、オープンなコミュニケーションを築くこともできます。ファミリーテクミーティングについてはこちらのコラムを参考にしてください。
3.親が手本となる
親がどのようにスマホやインターネットを使っているかを、子どもはよく観察しています。親が手本となるような行動を見せることで、子供もそれに倣いやすくなります。親自身がデジタルデバイスの使用に関してバランスを取り、子供に対しても同じルールを適用することで、信頼性と一貫性を持った指導ができます。
子供のスマホやゲームの使用に対しては、バランスとコミュニケーションが重要です。過度な制限は反発を生むことがあるため、親と子供が共に納得する形で適切なルールを設定し、健康的なデジタル習慣を育むことが大切です。
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まとめ
インターネットはこの10数年で急速に私たちの生活に浸透してましたが、その扱いについては、子どもだけでなく大人もまだ試行錯誤しているような状態です。ともすれば何時間もSNSをスクロールしてしまうのは、子どもだけでなく大人も同じではないでしょうか。
普段から、定期的に家族で食事をしたり外出したり、イベントに参加したり、プレイデートやエクササイズをしたりと、家族や友人と対面で出会う機会を作り絆を強めることも大切です。また、オンラインのアクティビティであっても、書いたり描いたり、動画を作成したりといった、クリエイティブな活動を行い、家族や友人と共有することもおすすめです。
ただ子どもからスマホやゲームを取り上げていても、子どもはインターネットと上手に付き合えるようにはなりません。子どもが自ら判断し管理できるスキルを身につけられるよう、親子の対話を通してスマホやゲーム時間の具体的な制限を設定したり、日々の生活の中でテクノロジーを使用しない時間や場所を指定したりして、過度の使用を防ぎ、バランスの取れたライフスタイルを維持することができます。
インターネットを利用するときに、何を取り入れ何を排除するのか、どのような判断をしたらいいのかを親子で考える機会として、ファミリーテクミーティングを活用することをお勧めします。子どもは、安心して会話ができる親子関係から、ヘルシーなテク習慣を身に着けていくでしょう。
ファミリーテクミーティングはじめの一歩ワークショップのお知らせ
子どものスマホやゲームの使用に関して悩んでいらっしゃる方のための、「ファミリーテクミーティングはじめの一歩」ワークショップを開催します。
- 子どもがスクリーンをみているとイライラモヤモヤする。
- 何度言っても、ルールを守ってくれない。
- 制限やロックを子どもが勝手に外して隠れて使っている。
- すでに制限がない状態になっていて、子どものやりたい放題。コントロールできない。
- デジタル機器を取り上げると、泣き叫んだり癇癪を起こすので困っている。
- 家族でうまく話し合えるか自信がない。
これからの生活において、インターネットやデジタルテクノロジーは切っても切り離せないからこそ、親がプロアクティブに子どもとかかわっていくのが理想です。このワークショップでは、子どもにどのようにアプローチしたらいいのかをお伝えします。